Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「頑張って……!」


 つぶやくようにみのりはようやく言葉を発した。
 こうやって祈るようにつぶやくことしかできない自分が、とても無力に感じられた。

 どうしたら遼太郎の力になれるのだろう。今のみのりには大きな声援を贈るくらいしか出来ないけれど、それが励みになるのだろうか……。
 思いつくことは、どれも無為なものに思えてくる。


 戦況は苦しいまま、刻々と時間だけが過ぎてゆく。
 芳野が攻撃を仕掛けようにも、なかなかボールを支配させてもらえない。芳野がボールを持っても、すぐに相手に捕まり、ラックやモールになってターンオーバーされてしまう。


 なかなか都留山の陣地に攻め込むことができず、芳野の陣地ばかりで試合が展開されている。


「あっ…!」


 みのりが思わず小さな声を上げ、澄子は思わずみのりを見る。


「どうしたの?」

「サイド攻撃がくる!気をつけて…!」


 みのりがそう言う間にもラックから出されたボールを拾った都留山のスクラムハーフが、密集の脇を抜けて、ブラインドサイド(攻撃をする幅の狭い方)へ素早い動きを見せた。

 そしてボールは、スクラムハーフから俊足のウイングへ。ここで抜かれてはトライを許してしまう。同じく俊足の遼太郎が懸命に走って、ためらいもせずにタックルにいく。


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