Rhapsody in Love 〜約束の場所〜

　とうとうロスタイムに入ってしまい、芳野の応援席に絶望感が漂ってきた。それでもみのりは、このままでは終わらないと信じていた。

　まだやれる…！

という遼太郎の意志が、みのりの胸に響いてくるのが分かる。

　もう１つトライを決めてほしい…と祈りながら戦況を見守っていると、逆に都留山側のウイングがハーフウェイライン付近からゴールラインめがけて、強引とも言える突進を始めた。

　これでトライを許せば、最後にだめ押しされるように、試合が終わってしまう。みのりは焦りのあまり、声も出せず自分の指の甲を噛んだ。


　そこに、待ち構えてタックルに行ったのが、この攻撃を読んでいたかのように、ちょうどいい場所でディフェンスをしていた二俣だ。

　都留山の選手にも体格で引けを取らない二俣の、まさにお手本のようなタックル。
　しかも、捨て身のタックルではなく、二俣は相手を倒した後、自分は流れるような動きで素早く立ち上がり、放されたボールを拾い上げると走り出した。


「おお、ジャッカルだ！」


　みのりの近くにいたラグビーに詳しいと思われるおじさんから、声が上がる。
　言葉だけは知っていたが、この目の覚めるような素早いプレーが〝ジャッカル〟だと、みのりは初めて知った。