Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「ううん…。花園行くよりもいい試合を見せてもらったから。すごく感動した。本当よ?」
首を軽く横に振りながら、みのりは優しく微笑んだ。
バッグからタオルハンカチを出して、濡れた二俣の頬を拭いてあげると、二俣は渋面を作りながらも涙を堪えようと唇を震わせた。
「みのりちゃん、遼ちゃんがあっちにいるから…。」
二俣からそう促されて、みのりは遼太郎のいるところを確認した。
皆から少し離れたところで、ベンチに一人で座り俯いている。
ヘッドキャップを脱いだままの髪はくしゃくしゃで、その髪やジャージのところどころには、ちぎれた芝が、白いショーツには芝の緑が付いている。
両肘をついている太腿の先の膝小僧は、擦り剥いて血がにじむ。
自覚したばかりでまだ腫れ上がっているような遼太郎への想い――。
それを胸に抱えて、躊躇しつつみのりは戦いを終えた遼太郎に近づいていく。すると、気配に気づいた遼太郎はチラリとみのりを一瞥して、目を伏せた。
みのりは試合に負けても頑張ったことをきっと労ってくれるだろうが、遼太郎の中の落胆は計り知れないものだった。