Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「仲松さん、忙しそうだね。」
そう言われてみのりは、お湯を注いで膨れ上がるコーヒーから江口へと目を移した。息つく暇もないようなみのりに比べて、江口は至って暇そうだ。
「…あっ、そうか。江口先生、体育は中間考査がないから、問題作らなくてもいいんだぁ~。考査中は授業もないし、採点もないからちょっと息が抜けますね。」
みのりは羨ましそうな視線で、江口を見た。そう言われると、江口はちょっと話を切り出しにくかった。
けれども、鼻孔をくすぐるコーヒーの香りは職員室に漂い始め、他の職員たちが寄ってくるのは時間の問題だった。
「前に言ってた食事の件、考査中くらいにどうかな?」
考査中は業務に多少余裕ができるので、忘年会などの飲食会などが入ることも多い。
「そう言えば、そんなこと言ってましたね。」
仕事に追われているのと、遼太郎のことで頭がいっぱいのみのりは、その件についてすっかり忘れてしまっていた。
「考査の初日に1年生の日本史があって、その採点を早めに終わらせて おきたいんですよね。来週の金曜日には、私、研究授業があるから、その準備もあるし…。」
みのりのあいまいな返答に、江口は顔をしかめた。