Rhapsody in Love 〜約束の場所〜


 この書き込みを読んで、遼太郎は顔を上げ振り返り、後ろの席に座る二俣と、それから宇佐美へと視線を走らせた。

 二俣は親指を立ててみせる。宇佐美はニンマリと笑いながら、手を振った。

 即座に行動してくれた二人の判断力に、遼太郎は感謝した。二人とも名前を入れての書き込みで、その本気の度合いが窺われる。

 これで問題の書き込みが削除されればいいが、まだ良い結果が出ていないので、遼太郎は気が気ではなく何も手につかない。1限の古典の授業の内容も、全く頭に入っていなかった。


 2限の授業で教室移動をして、授業が終わって戻る途中で、1年生の授業を終えたみのりと廊下で出会った。

 目が合った瞬間、遼太郎の心を癒す花のような笑顔を、みのりは見せてくれる。
 あんな笑顔を見せてくれるということは、まだ裏サイトの書き込みのことは知らないらしい……。


 ホッとしながら遼太郎が歩み寄ると、


「狩野くんは、理科は地学を選択してるんだね。珍しいよね、地学選択者。」


と、みのりは思いもよらないことを言った。
 遼太郎は無言で、手に持っている地学の教科書に目を落とす。


「私も、高校生の頃、地学選択してたのよ。面白いよね、地学。」


 そう言うみのりを見下ろして、遼太郎も優しく微笑んだ。


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