Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「先生、体の具合はどうですか?」
話を変えて遼太郎がそう尋ねた途端、みのりは顔を赤らめた。
「う…、うん。熱も次の日には下がったし…。もう、大丈夫みたい。あの日は本当にありがとね。」
「いえ…。」
あの日の出来事が色々と思い出されて、遼太郎自身も顔が赤くなっていくのが分かった。
「狩野くん、うちからあの自転車を置いてた所まで走って戻ったの?」
「えっ…!?」
アパートを出るとき、みのりは眠っていたはずなので、遼太郎は目を丸くした。
「なんで?」
「狩野くんが帰る時のドアの音で目が覚めてたのよ。それから狩野くんが橋渡って向こう岸の道を走って帰るのが見えたから…。私、タクシーであそこまで戻るように、お金預けてたよね?」
「…そんな!」
遼太郎は思わず大きな声を出してしまったことに気が付いて、声を潜めた。
「そんなことにお金を使うなんて。それに、最近体がなまってたんで、ちょうどいいトレーニングになりました。」
遼太郎がそう言うと、それに応えるようにみのりも微笑む。
自分を見てこんな風に微笑んでくれる幸せに、遼太郎の心は状況も忘れて震えてしまう。その笑顔を見下したまま、思わず遼太郎はそれに見惚れてしまった。