Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
その時、廊下を行きかう生徒たちの何人かが、自分たちを振り返って見ていることに、遼太郎は気が付いた。
ドキッと心臓は反応し、みぞおちに冷たいものが伝わり落ちる。
――あの、書き込みを見て…?!
だったら、今二人で親密そうに一緒にいるのは、噂の火に油を注ぐようなものだろう。
弾かれたように、遼太郎はみのりの側から後ずさった。その突然の行動に、みのりは驚いた表情を見せる。
「先生、すいません。俺、ちょっと用事が…!」
そう言うや否や、遼太郎は踵(きびす)を返して走り出した。
不自然な行動なのは、自分でも重々承知だ。だけど、今はこうでもしないと、みのりを守れない。
紛れもなく自分とみのりは、なんでもないただの教師と生徒だ。だけど、それを分かりやすいように、はっきり示しておかなければ。
たとえ学校でも、今のように二人で話をするのも、しばらくはやめておいた方がいいだろう。
――くそー!くそー!あの、書き込みのせいで…!!
心の中で、珍しく遼太郎は悪態をついた。
早く削除されないと、あのことがみのりの耳に入るのも、時間の問題だ。