Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「まず、自分の好きなこと、好きな人物、興味があること、大学で勉強しようと思っていることなどなど、とにかく何でも書き出してみて。それから、その中から一つテーマにしようと思うものを決めてね。」
生徒たちは早速作業にかかると、みのりは机間指導を始めた
「大学で勉強しようということについて調べるのは、基礎的な知識も身に付いていいかもね。でも、レポートの内容は、あくまでも日本史に関係することよ。」
机の間を歩くみのりが何度か側に来たが、遼太郎のプリントのテーマを書く欄が空白なのを確認しては、通りすぎて行った。
遼太郎が気にするまでもなく、授業中のみのりは遼太郎を特別扱いなどしない。どちらかと言えば、素っ気なく感じるくらいだった。
けれども、この日の遼太郎は、みのりと接触することに、過剰に反応してしまった。
授業の終わる直前、最後までテーマが決まっていなかった遼太郎が気になって、みのりがプリントの上に載せられた遼太郎の手をそっとずらそうとした。
その時、遼太郎は触れられるのを拒否するように、素早くその手を引っ込めた。
このあからさまな反応に、みのりは思わず息を呑んで身をすくめた。