Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
けれども、今度の決心は、みのりの心に強固な鎧を作った。遼太郎に拒絶され無視されても、押し隠すためにそれは却って好都合だ。
自分のこの想いは、誰にも言わず誰にも気取られないように、自分の心の内にとどめて、お墓まで持っていくつもりだった。
みのりは思い切って、居心地のいい布団から出た。手早く着替えをして洗顔し、申し訳程度の化粧をして身支度を整えると、早朝の冷たい空気の中、廊下を渡って本堂へと向かった。
本堂の中には初祈祷を受けにきた檀信徒が十数人、本堂の外にも初詣客がちらほらといる。境内の片隅では、有志の檀信徒によるお茶とぜんざいの供養がされていた。
年末年始は、お盆と並んで1年で一番忙しいときだ。本来ならば年末にも早く帰省して手伝うべきだったのだが、それがままならなかったので、新年くらいはちゃんと手伝おうと、みのりは思っていた。
と言っても、新年明けてからも個別指導に生徒たちが来るので、三ヶ日が済んだら芳野に戻らなければならないのだけど…。
「おはよう。どこ手伝えばいい?」
みのりは祈祷を受け付ける帳場にいた母の喜美代に尋ねる。
「あら、おはよう。手伝ってくれる?じゃあ、お守りのところに行って。菊池さんが暗いうちからずっとしてくれてるから。」