Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 菊池さんというのも、檀家の総代だ。みのりが小さい内から、よく可愛がってもらっている。
 可愛いから心配になるのか、街の顔利きであるこの人が縁談を次々と持ち込んでいることを、みのりは知っていた。その縁談にみのりが見向きもしないことを知っているのかいないのか、それでも菊池さんは昔と変わらず気のいい小父さんだ。


 みのりは菊池さんと交替して、初詣客がお守りを買い求めるところの店番を始めた。
 いくつか並ぶお守りの中に、つい1か月前に父の隆生から送られてきた物があった。あれは、遼太郎に一つ渡しただけで、後の数個はそのまま残っている。

 あのお守りを、遼太郎はまだ持ってくれているだろうか……。

 そんなことを考えながら店番をしていると、参詣している中に見知った人が幾人か認められた。中には、みのりの小中学校の同級生もいて、小さい子どもを伴っていたりする。泣きじゃくる赤ちゃんを宥めたり、走り回る腕白を叱ったり、その光景が何とも微笑ましい。


 もう三十歳にもなるから当然なのだが、目にする同級生たちは皆、小さいながらも幸せを見つけて、自分の居場所を築いていっている。
 比べても意味のないことだとは思うけれども、みのりは自分の境遇を顧みて、一抹の不安と寂しさを感じた。


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