Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
忌々しい記憶が再現されそうだったからとは言えない隆行は、みのりの問いには答えずに、話の矛先をみのりに向ける。
「俺のことより、姉ちゃん。なんで結婚しないんだよ。まさか、結婚できない相手と付き合ってるとか?」
結婚の問題に関して、腫れ物に触るような両親と違って、隆行はズバズバと訊かれたくないことも訊いてくる。
核心を射抜くような問いに、みのりは窮した。
数ヶ月前までの恋人は妻子持ち、今好きな人は生徒だなんて、口が裂けても言えない。隆行の二十歳の彼女を、若すぎると言えた義理ではない。
「べ、別に付き合ってる人なんていないし…。」
とりあえず、みのりは事実を言った。けれども、これ以上詮索されるのはゴメンだ。
「結婚しないのは、相手がどうとかいう問題じゃなくって。仕事よ、仕事が忙しくって、それどころじゃないの。あんたも、いい加減、ちゃんと仕事したらどう?就職口がないんだったら、観念してなりなさい。お坊さん。」
このみのりの切り返しに、今度は隆行が答えに窮した。決まりが悪そうに自分宛の年賀状へと目を移したが、鼻の孔がピクピクしているので、癪に障ってるらしい。
これ以上言うと、ケンカになりそうなのは分かっているが、年に1度くらいしか会えない相手だ。この際、言いたいことを言わせてもらうとばかりに、みのりは畳みかける。