Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
出番の終わった生徒たちの元へと、一目散にみのりが向かうと、運び出した琴の隣で先ほどの佐々木が泣いている。
こんな時は、何を言ってもこの子の心には届かない……。ましてや、琴のことがわからないみのりの言葉は、気休めにもならないだろう。
他の3人の1年生が懸命に慰めていたが、みのりはその側に行って、その佐々木の肩をそっとしばらく抱いてあげた。
筝曲部の部員は、みな真面目で、成績も優秀な子が多い。何事にも真面目なので、今度の大会に向けての練習も、本当に一生懸命だった。
でも、いくら一生懸命でも報われないことはある。きっと今回の結果は、金賞にはとどかないだろう。
この報われない経験を、この子たちは優秀であるが故にほとんどしたことがなかった。
――今回のことに懲りて、挫折しなきゃいいけど……。
みのりは、他校の演奏を聴きながら、佐々木が部長に連れられて客席に着いたのを見守った。