Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 そして自分は、高校時代の先生の一人として、遼太郎の記憶の底に埋もれて、数年もすれば忘れ去られてしまう…。

 そんなふうに考えながら、みのりは天井を見上げ涙を拭った。


 ……それでいいと、みのりは思った。

 これからは、遼太郎の人生に自分は必要ない。遼太郎が夢を達成できて送り出せれば、自分の役目はそれで終わっていると…。


――卒業式の時は、笑って送ってあげられるようにしなきゃ。


 そう思って目を閉じると、また涙が零れ落ちる。

 いくら心を鍛えても、別れの時はきっと涙が出てきてしまうだろう。それならば、心を氷の鎧で武装しよう。その氷が決して融けないように、氷の冷たさで心を痺れさせておこう。

 みのりはその練習とばかり心を冷し鎮め、そして涙を止めた。



 その日、遼太郎は午後から自動車学校を休み、思い切って学校へ来てみた。

 ちょうど体育の後の日本史の時間だ。
 3年1組の授業の時間は空いていると言っていたので、当然みのりは職員室にいるとそう思っていたのだが、そこにみのりの姿はなかった。


 いきなり遼太郎は、肩透かしを食らってしまう。
 それでも、ちょっと席を外しているだけかと思い、隣の席の(遼太郎にとっては少し気に食わない)古庄に尋ねてみる。


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