Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「自動車学校のバスここで降りて、自転車で帰るはずだったんですけど、雨が降り始めたんで、家の迎えを待ってるんです。」


 しばらく店頭で待っていたのだろう。遼太郎は身を縮めて、寒そうだ。


「そっか、自動車学校行ってるんだね。仮卒してからも、忙しかったんだ。」


――それで、学校の方には来れなかったのかな…。


 遼太郎が話に来なかった理由が解った気がして、みのりの胸のつかえが少し取れた。

 思考がそこに及ぶと、遼太郎が自分にしようとしていた話を聞きたくなったが、聞くのが怖い気持ちの方が勝った。


「ラグビーは雨でも平気でやってたけど。やっぱりこの雨じゃ、さすがに自転車で帰れないか…。」


 半分からかうように、みのりが笑うと、遼太郎も肩をすくめる。


「明日は卒業式なのに、風邪引きたくありませんから。」


「今日引かなくても、明日の卒業式で風邪引きそうよ。準備で体育館に行ったんだけど、そりゃあもう、寒いのなんの!」


 おどけたみのりの物言いに、遼太郎も顔をほころばせた。

 遼太郎の笑顔を見ると、みのりはホッとする。
 優しい笑顔は、みのりの心のカンフル剤だ。心にスッと染み透って、暖かく癒してくれる。


――この笑顔を見ることも、なくなる…。


< 707 / 743 >

この作品をシェア

pagetop