Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「それじゃ、先生…。」


『…お願いします』と言いかけたその時、


 プップッ――!


「遼太郎―!」


 目の前に母親が到着していた。


――またかよー!?嘘だろう…!!


 遼太郎は、つくづく自分が間の悪い男だということを自覚した。


 母親を確認した後、開きかけた口を閉じられないまま、みのりを見やる。すると、みのりは「よかったね」というように、にっこりと微笑んだ。


――……がっかりしてるのは、俺だけか……。


 遼太郎は、開いた口を溜息を吐くのとともに閉じた。


「遼太郎!何してるの?早く……あら、仲松先生!」


 母親が助手席側の窓を開けて叫ぶ途中で、みのりの存在に気が付いたらしい。


 みのりは遼太郎に向けたのと同じ笑顔で、母親に丁寧にお辞儀をした。それを受けて、母親もハンドルを握ったまま頭を下げる。


「それじゃ、狩野くん。また明日ね。」


 みのりにそう促されて、遼太郎も別れのあいさつの代わりに会釈をした。


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