Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 駐車場ではないところに停車しているだけなので、長時間は止まっていられない。遼太郎が素早く車へ乗りこむと、母親はもう一度みのりに会釈をしてアクセルを踏んだ。


 白く曇った窓越しにみのりを見ると、みのりは寒そうに背を丸めながら、手を振ってくれていた。


「先生は買い物に来てたの?」


 母親が口を開く。


「うん…。」


 遼太郎は素っ気なく答えた。自分の中に渦巻く複雑な感情を、母親には気取られたくない。


「明日は、仲松先生にもちゃんとお礼を言うのよ。」


 雨の夜道、視界の悪い中での運転をしながら、母親は念を押した。


「…わかってるよ。」


 雨粒が斜めの線を引く窓を見つめて、遼太郎は同意した。


 みのりには、お礼よりももっと大事なことを言わなければならない。


 明日こそは、絶対に……!




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