Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
みのりは身振り手振りで熱弁をふるい、最後はガッツポーズで締めくくった。
みのりのその姿を、却って滑稽に感じたのか、生徒たちのどこからともなくクスッと笑いが漏れる。
その反応を確かめて、みのりもニッコリと笑い、
「それじゃ、授業に入ります。」
と、授業の資料を配り始めた。
数日後、みのりは3年1組の連絡ボックスに、放課後に遼太郎を呼び出すメモを入れた。
全県模試の結果で、遼太郎の日本史の成績は、国立クラスの上位者には及ばなかったもののかなり良い結果で、担任の澄子も驚くところだった。
しかし、9月に行われる次回は、もっと試験範囲も広がって、問題も難しくなる。みのりはその対策をこれから講じたいと思っていた。
もちろん、遼太郎のような出来る子よりも、一桁の点数を取るような子の対策もしなくてはならないのだが、今から基礎の基礎から指導してモノにするのは、時間もなく不可能に近い。
苦手と思っている子に無理やりさせるよりも、得意にしている子を伸ばしてあげる方が得策だ。
「先生。」
遼太郎が、放課後の職員室の雑然とした空気の中、みのりの席の傍らに立った。