Rhapsody in Love 〜約束の場所〜

29 約束の場所





「わお!澄ちゃん!!素敵ー!」


 出勤して澄子の姿を見るなり、みのりは声を上げた。

 3年1組の担任として卒業生を送り出す澄子は、気合を入れて色留袖に袴という出で立ちで、今日の卒業式に臨む。髪も綺麗にセットされており、今日は随分早起きしたのだろう。


「みのりさんは、いつもに増して綺麗だね。」


と、澄子も返してくれたが、みのりは少し改まった薄いグレーのスーツを着ているだけで、髪も化粧も特に変わったところなどはない。
 ただ、襟元にフリルの付いたブラウスの下には、体育館の冷え込み対策として、バッチリ防寒下着を着けていた。


 職員朝礼では今日の日程や手はずが確認され、いつもの年のように卒業式への時間が淡々と過ぎていく。

 朝礼が終わると、部活用のベンチコートを着た古庄が、早速立ち上った。


「くぅー、駐車場整理、寒いだろうなぁ~。」


 これから古庄は、駐車場になるグラウンドへ向かうのだろう。

 この日の天気は、昨日からの雨は止んではいたが、空には雲が広がり日差しは届かず、昨日よりも一層冷え込んでいる。ややもすると雪もちらつきそうで、古庄が愚痴をこぼしたくなるのも無理もない。


< 711 / 743 >

この作品をシェア

pagetop