Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 ……遼太郎はどうだろう?悔いは残っていないだろうか?


――きっと悔いなんてない。今、晴れやかな気持ちで、希望に胸が膨らんでいるはず…!


 遼太郎がそうやって卒業していけるように、みのりも惜しむことのない最大限の力を注いだ。
 それが、生徒に対する教師としての務めだから。何よりも、遼太郎の未来が明るく拓け、遼太郎がそこに迷いもなく踏み出せるように。


 けれども、みのりの心は切ない痛みに突き上げられる。
 その痛みで心が熱を持たないように……、みのりは胸を手で押さえ、必死で痛みを和らげた。

 また、鼻の奥にツンとした痛みが走る。みのりが唇を噛んで目を閉じた時、耳には教頭による閉式の辞が聞こえていた。


 卒業式が終わった――。

 もう、これで、遼太郎の姿が目に写ることもなければ、遼太郎の声を聞くこともない。

 愛しい遼太郎は、これからみのりの記憶と思い出の中で、生きていくことになる……。



 みのりの切ない心の疼きとは裏腹に、門出を迎える当の遼太郎は、やり残していることが大きすぎて、迷いもなく一歩を踏み出せる……
と言った心境ではなかった。

 澄子から名前を呼ばれ、返事をするときこそ緊張したが、その後の校長式辞はもちろん、送辞も答辞も耳になんか入っていなかった。


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