Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
どこで、どんなふうに…ということまでは考えが及ばない内に、卒業式は終わってしまった。
これから、卒業生は教室へと移動する。この体育館の中にみのりもいるはずなのに、遼太郎は一目も見ることができないまま、出て行かざるを得なかった。
いつものように教室の席に着き、これからのLHRが始まるその前に、大量の配布物が押し寄せてきた。
この期に及んで、「春期休業中における心得」などもある…。卒業記念品の証書入れの筒や、英語や国語の課題の返却物などに混ざって、日本史の卒業レポートの文集が配られた。
和紙の表紙に、京都建仁寺に蔵される「風神雷神図屏風」の絵が印刷され、一冊一冊それぞれ違う色の江戸打の組紐で綴じられている。
目次やみのり自身の書いたあとがきなども含めると、その文集は100ページを優に越えていた。
これを25人分、みのりはせっせと作ってくれたのだ。忙しい毎日の仕事の合間をぬって、たった一人で。
みのりの生徒を思う心が、この文集から伝わってきて、遼太郎は胸が詰まった。
――俺の好きになった人は、こんなに素晴らしい人だ…!
他の日本史選択者は、それが分かっているだろうか。
遼太郎は、みのりがどんな苦労をしてこの文集を作り上げたか、一人ひとりに言い聞かせて回りたい衝動に駆られた。