Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 と言っても、前もって謝恩会のことは周知されていたし、簡単な昼食も出されるらしく会費も徴収されていたので、誰も異を唱える者などいない。

 とても出ていけるような雰囲気ではないことに、遼太郎は溜め息をついた。どうやらみのりの元へは、謝恩会が終わってから行くしかないようだ。




「やっぱり、降ってきたね…。」


 お弁当を食べるのに、お茶を淹れに立ったみのりに、久我が声をかけた。


「えっ!?また雨?」


と言って、みのりが職員室の窓から外を確認すると、真っ白な空から風に乗って舞う無数の雪が目に入ってきた。


「どうりで寒いわけだよなー。」


 みのりの横に立って、久我も窓の外を眺める。その顔を見て、みのりは何かに気がついた。


「久我先生。今日はいつもと違いますね…。」

「え…?」

「あっ!分かった。髭、今日はキレイに剃ってある!」


 そう言われた久我は、思わずあごに手をやった。
 髭が剃られているだけではない。卒業式に出席するために、きちんとスーツを着ているので、いつものだらしのない風貌とは少し違って見えた。


 澄子は、いつもと違う今日の久我を見ただろうか…?卒業生の担任という立場の澄子は、朝からずっと忙しく、きっとこのすっきりとした久我を見ていないに違いない。


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