Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「久我先生も、そんな格好できるんですね~。」
みのりは久我の全身をじろじろと観察し、何気に失礼なことを言ってしまった。
しかし、素直な表情で目を丸くするみのりに、悪意を感じなかった久我は、鼻で息を抜きながら笑う。
「昨日、教頭から釘を刺されたんだよ。今日は髭を剃って、スーツを着てくるようにって。」
これを聞いて、みのりの方も苦笑いした。確かに、久我にはそのくらい具体的に指示しないと通じないだろう。
「でも、今日の久我先生、すごくかっこいい!いつもそうしてればいいのに。」
面と向かって、ここまでサラッと「かっこいい」と言えるのは、みのりが久我を意識していないからだ。シャイな上に、久我を想っている澄子だったなら、到底言えない台詞だろう。
久我は、みのりが自分を対象として見ていないことこそ自覚していたが、「かっこいい」なんて言われたことがないので、やはり面食らってしまう。
「そんな…、面倒くさくて、毎日なんてやってられん。」
照れを隠すように、久我がつれない受け答えをしたので、みのりも少々消沈する。不眠症で出勤するだけで精一杯の久我にとって、身だしなみなんて二の次なのだろう。