Rhapsody in Love 〜約束の場所〜


 トクン…と、みのりの心がさざ波をうつ。
 油断をすると、我慢している想いが悲鳴をあげて暴れだしそうだ。


 もし今、遼太郎に会ってしまったら、平静でいられる自信がみのりにはなかった。
 泣き崩れて遼太郎を困らせるか、我慢できずに想いを打ち明け、もっと困惑させてしまうか……。


 久我のように、休みをとって帰ってしまうことが、みのりの頭を過った。謝恩会をしている内にそうすれば、遼太郎に会うことはない。


 しかし、みのりはすぐさまその考えを否定した。
 家に帰って一人になってしまったら、それこそこの深い想いの淵に引きずり込まれて、身動きがとれなくなる。息ができず苦しくなって、涙が溢れて、自分で自分を制御できなくなるだろう。

 遼太郎への想いは、誰にも打ち明けるわけにはいかず、この苦しさを誰に受け止めてもらうこともできない……。今日の夜には、一人でこの苦しみと対峙しなければならない。

 けれども、雑然とした職員室にいて、同僚たちと冗談などを言い合っている内は、少しは気が紛れる。
 謝恩会が終わり、遼太郎が帰宅するまで、みのりはここで息を潜めていることに決めた。


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