Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「あー、コートを着てくるべきだったかな…。」


 晴れていたら、まだ日が燦々と射し込む時間帯なのに、空は厚い雲に覆われていて薄暗く、却って気温は下がっているようだ。依然として、雪もちらついている。


 後になって、「これが残ってたよ」なんて言われたくないので、ゆっくり慎重に掲示した順番を思い出しながら、みのりは掲示物を剥がして回った。


 卒業式は昼前に終わっているので、在校生のほとんどは弁当を持ってきておらず、すでに帰ってしまっている。

 謝恩会をしている3年1組以外の卒業生も、LHRが終わって2時間以上経っているので、校舎内には全くと言っていいほど人影がない。
 教員たちもこの寒さの中を出歩く者などおらず、みんな職員室やそれぞれの教官室に籠っているらしい。


 3年1組は賑やかなのだろうが、棟の違うこちらの教室や廊下の閑散とした様子は、いっそう寒さに拍車をかけている気がした。


 向かいの棟の最上階、一番西側が3年1組の教室だ。まだ照明が点灯しているし、職員室に澄子も戻って来ていなかったので、謝恩会は盛り上がっているのだろう。


――あそこに狩野くんもいるはず……。


 みのりは、冷たく暗い空気の中、暖かく洩れだしている明かりを見上げた。


< 733 / 743 >

この作品をシェア

pagetop