Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
――やっぱり…、「おめでとう」くらい言ってあげたかったな……。
遼太郎だけではない。二俣や衛藤、宇佐美や平野、白濱や平井や遠藤…3年1組の可愛い生徒たちに。
その一言を言うくらいの間なら、何とか遼太郎への切ない気持ちを抑えておけるかもしれない。
廊下を歩きながら、窓の外ばかりに気を取られていたものだから、「女子トイレ」の貼り紙に気付かず通り過ぎるところだった。
「おっと…。」
みのりは小走りで数メートル戻り、その掲示物を剥ぎ取った。
これで全ての掲示物を回収し終わったはずなので、ようやく暖かい職員室へ戻ることができる。
管理棟へ向かう途中、犬走になっている渡り廊下に差し掛かった。そこから見渡せるグラウンドには小雪が舞い、生徒の姿も見えない。野球部もサッカー部も、今日はさすがに休みらしい。
みのりが足早にそこを通り過ぎようとした時、西側の雲が切れて、明るい陽射しが辺りに満ちた。
やさしい光を放つ太陽の周りの雲が、金色に輝いている。
みのりは思わず、寒さも忘れてその神々しい光景に目を奪われた。
足を止めて、息を吸い込んで、心を洗う――。
遼太郎が旅立つ日にふさわしい…と、みのりは思った。彼の前途が、この光景のように光り輝いていることを、願って止まなかった。