ナンパ男との恋~最終章~
「つーか、俺
今、貴重な時間なもんで
またな。」


そう言いながら
まだ話してる途中の女性達の横を
私の手を引っ張り
すり抜けた。



「え?ちょーっ輝樹ってば!」


背後から甲高く
輝樹の名前を叫ぶ声が聞こえるけれど
一切振り向きもせず
力強く手は握られたまま
引っ張られるように合わない歩幅で
ついていくけれど・・・


こういう時の輝樹は
どう接すればいいのか分からない。


そんな私に気づき
少し歩くペースを緩めると

近くにあった休憩スペースのベンチに腰をかけた。



そして、



「世間って
せめぇもんだな・・・
昨夜の今日で
普通会わねぇよなぁ・・はは・・」


参った様子で
苦笑いを浮かべると

私の方を見ながら


「あいつ店辞めててさ。
何か、俺
意味分かんねぇうちに
宣伝に使われてて
まぁ・・・そういう事」


「そっか・・・・
嫌な思いさせちゃって
ごめんね・・・」


「意味分かんねぇ事言うなよ。
ああいうのも案外
おもしろかったぞ」


そう笑いながら言っているけれど
帰ってきた時の様子を考えると
きっと・・・
自分でもしんどかったはずなのに
私の事まで考えて・・・


・・・胸が苦しくなる。




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