シェリー ~イケない恋だと、わかっていても~
「なによ、これ……」


梨江子の声が、低くなったのが分かった。だからさっきよりも、空気が重たくなった気がした。


「あはは……。けいちゃん、その人とのエッチが最高らしいよ?わたしは、ドンクサイから気付かないんだって。けいちゃん、わたしのことバカにしすぎだよねぇ。もう、イヤに、なっちゃうんだか、ら……」


この空気をなんとかしようと、無理矢理笑ってみたけど、途中から笑えなくなり、せっかく泣き止んだ涙がまた溢れてきた。


「なに、こんな時に笑おうとしてんのよ。バカっ!!」


そう言った梨江子もポロポロと涙が零れ、それを優しく匠哉さんが抱きしめていた。


「彩月ちゃん、大丈夫……?」


匠哉さんの行動に指を咥えるようにして見ていたわたしに、隣から話し掛けられ身体が反応した。


「えっと、はい……」


〝大丈夫です〟とも〝大丈夫じゃないです〟とも言えず、曖昧な返事で返した。


「旦那さん、ひどいね。こんなカワイイ奥さんがいるのに、浮気なんて」
「そ、そんな。わたしなんて、可愛くないですからっ」


〝カワイイ〟とか言わないで……。今の弱ってるわたしに、その言葉は危険だよ……。


「そんなことないよ?彩月ちゃんは、すごくカワイイよ。そんな男と別れて俺と付き合う?」
「へっ!?」
「なーんてね。彩月ちゃん旦那さんのこと、好きなんでしょ?」
「……あ、うん。好き……ですね、多分……」


び、ビックリした……。急に変な事言うから、動揺しちゃったじゃない!


「だったら、取り返したら?」
「え?」


取り返すって、その女から……?けいちゃんの気持ちを……?


そんなこと、わたしにできるのかな……。そんなの自信ないよ……。


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