ウソつきより愛をこめて
「や、や、やリたいとか…直球で言わないでよ」
「エリカは本当にこの手の話ダメだねー。そのギャップ結構可愛いから、今度彼の前で使わせてもらお」
肩をすくめながら小さくなった私は、赤く染まった頬を両手で覆い隠す。
すぐに橘マネージャーの名前が出てきた美月には、私の行動の原因が全てお見通しなのかもしれない。
「エリカって橘マネージャー以外の人とは、全く経験ないんだっけ?」
「はぁ…まぁ、そうですけど…」
「あれだけ完璧な男が初体験だったら、そりゃ忘れたくても忘れられないよね。もしかしてキスも?やー本当可愛いー!」
なんかバカにされてるような気もするけど、ひとつだけ訂正がある。
「…気持ちとかは、全然残ってないから」
「え?」
「橘マネージャーのことは、もう全然好きじゃない」
はっきりとそう言いきった私に、美月は不思議そうな目で首を傾げていた。
「好きじゃないの?」
「うん…」
「じゃあ、単にヤリたいだけってこと?」
「……だから、その言い方やめて」
魅力を感じるのは、中身じゃなくて見た目とか雰囲気だけ。
今の状態は、二年前の自分にすごくよく当てはまるんじゃないだろうか。
「そっか。私も身体目当てなのか…」