ウソつきより愛をこめて
なんだ、それじゃあお互い様だ。
気持ちがなくても身体が反応してしまったのは、そういうことだったんだ。
「…ぷっ…」
「え、今笑うとこあった?」
「いや、随分純粋だなって思って」
「誰が…?私のこと?」
「エリカは純粋すぎて、頭で難しく考えすぎてんの」
うんうんと頷く美月に、私は慌てて首を横に振る。
私が純粋な女だったら、絶対に元彼のことをいやらしい目で見たりしない。
「じゃあエリカ、本当に欲求不満かどうか他の人試してみたら?」
「他の人…?」
「そうねぇ。ほら、よくあんたに声かけてくるメンズフロアの前橋とか。顔だけは悪くないし、間違いなく女好きだし、そういうこと楽しむだけなら、もってこいの奴じゃん」
「…冗談言わないで!」
美月にそう言われた瞬間、身体中にぞわぞわと悪寒が走って私は声を荒げた。
あんな軽率な人とどうにかなるなんて、想像しただけでも気分が悪くなる。
いくら見た目がよくとも、生理的に受け付けない。
「なんで?身体を満たしたいだけなら、誰でもいいじゃない。別に橘マネージャーじゃなくても。イケメンなんてこの世にいくらでもいるよ」
「それは…」
なんでと聞かれるのが一番困る。
口では説明つかないからこんなに悩んでるのに。
「ほらね、エリカには身体だけとか無理なんだよ。変に潔癖だから、今まで誰ともそういう関係を持てなかったんじゃない。それが橘マネージャーとだったらいいなんて、一体どういう事よ」