ウソつきより愛をこめて
「そんなの、わか…」
「わかんないんだったら、答えが出るまで永遠に悩んでなさい」
眉間にしわを寄せて思い悩んでいると、額に美月のデコピンが飛んでくる。
「…本気で痛いんですけど」
おでこを押さえながら涙目で睨む私に、美月はやれやれと大きなため息をついていた。
「…もう、いい加減まだ気持ちがあるって認めれば?」
「やだ」
「やだって…なにそれ、子供か」
「寧々が私の子供じゃないってバラしたら、…どうせ口も聞いてもらえないほど嫌われる」
「そんなの身から出た錆じゃない。ほんと強情。頑固女。エリカはそうやって理由を作って、自分の気持ちに歯止めかけてるだけじゃない」
「何とでも言って」
本当は美月の言う通りだ。
好きになんてなってたまるかって思ってる時点で、気持ちはもう動き出してる。
二年前と同じ思いなんて絶対に味わいたくないのに。
「電話、鳴ってるよ」
「…知ってる」
さっきからテーブルの上で私のスマホが振動している。
名前を確認しなくても相手がわかっていた私は、素知らぬ振りでテレビを見続けていた。
「出ないの?」
「…出たくないの!」
家に帰らなくなってから、橘マネージャーはこうやって毎晩決まった時間に電話をかけてくる。
しかも仕事の話かもしれないから、無視することも出来ない。
「…そのうち、ここに直接押しかけてくるんじゃない」
美月にそう嫌味を言われてため息をつき、私は渋々画面の通話を親指でタップしていた。