ウソつきより愛をこめて
「……おい、どうすんだ」
「どうするって…ゆりちゃん、本当にいいの?また、ここで働いてくれるの?」
信じられない。
私…あんなにひどいことばかり言ったのに。
「正直最初は、納得できませんでした。私、親にも怒られたことなくて…甘やかされて育ったから。でもちゃんと叱ってくれた店長のことが、ずっと頭から離れなくて…。私、今まで本当に最低でご迷惑ばかりかけて、申し訳なく思ってます…!これからは心を入れ替えて一から頑張っていきたいです…っ」
「ゆりちゃん…」
彼女が戻ってきてくれたことが、ただ純粋に嬉しくて思わず口元に手を当てた。
だって彼女はバイトでも、…ずっと一緒に働いて来た仲間だから。
あんな後味の悪い終わり方をしなくて本当に良かったと心から安堵していた。
「本来なら二日以上無断欠勤した場合は、バイトであろうと即刻解雇だ。今回は結城店長に免じて特例の措置だからな。年末年始は死ぬ気で働け」
「橘マネージャー…」
ゆりちゃんの前で本性を顕にしている橘マネージャーを、私は驚きの目で見つめる。
「こいつ、お前の様子が気になって店に何度も電話してきてたんだぞ。…良かったな、嫌われ役になった甲斐があって」
背中をぽんと叩かれ、私の胸に熱い思いがこみ上げていた。
「じゃあ白鷺、後のことは頼んだぞ」
「はい…っ」
「…え、ちょっと!」
橘マネージャーが私を引き連れて、さっさと事務所を出て行く。
ゆりちゃんはまるで何かを吹っ切ったような、清々しい表情を浮かべていた。