ウソつきより愛をこめて
「…え?」
橘マネージャーの意外な告白に面食ってしまった私の足は、石のように硬くなって動かなくなってしまった。
「人を散々ロリコン呼ばわりしやがって…」
だって絶対私だけじゃないと思ってたのに。
苦手なら、なんで六つも下の私と付き合ったの…?
「俺は別に年齢で判断してるわけじゃないからな」
橘マネージャーの頬が微かに赤く染まっている気がして、私は堪らず視線を下の方に移した。
これぐらいのことでいちいちドキドキしてしまう私は、やっぱりすでに頭のどこかがおかしいのかもしれない。
「そ、ソウデスカ…」
素っ気なく言ったつもりが、動揺してカタコトになる。
…なんなの、この甘ったるい空気は。
エレベーターが到着するまでのたった数秒が、私には恐ろしく長く感じていた。
「あれB1って…」
いつもの1階の職員通路とは違う光景に、そこから降りようとしていた私の足が止まる。
「なんで駐車場?私、寧々を迎えに行かないといけないんだけど…」
わけがわからずあたふたする私の手を引いて、橘マネージャーは自分の車に向かって歩き出していた。
「ねぇ聞いてる?…私寧々を…っ」
「小さい子を連れて、人混みを連れ回す気か」
「…人混み…?」
「保育園に預けているのならちょうどいい。夕方早めに迎えに行こう。それまでは、俺に付き合ってもらう」
「…え!?」
橘マネージャーは助手席のドアを開けて、私を中へと促す。
いつもは寧々の特等席なのに、そこに取り付けてあるはずのジュニアシートは見当たらない。
なかなか乗り込もうとしない私に向かって、橘マネージャーは鋭い眼光を飛ばしていた。