ウソつきより愛をこめて
「ちょ、ヤバイなにそれ!可愛すぎるっ!」
「だよな…。こっちの色とも迷ったんだけど。いっそのこと、両方買うか」
橘マネージャーがチェック柄のチュールスカートを二色見比べながら、大真面目な顔でそんなことを言っている。
ここは一着スカートを買うだけで諭吉が一枚飛んでいくような、高級子供服ブランドの直営ショップ。
大人の服と変わらない値段に、二の足を踏みたくならないんだろうか。
…まぁこの人外車乗ってるくらいだから、結構貰ってるんだろうけど。
「なんかさっきから余計なものばっかり買ってるな」
「じゃあちょっとは自重したら?」
「お前が買いたくなるようなこと言うからだろ」
苦笑いしながら、彼は持っている紙袋を私に見せつける。
今日私を誘ったのは、寧々に送るクリスマスプレゼントを一緒に選ぶためだったらしい。
だからこれは、断じてデートなんかじゃないんだけど…。
「結城、ちょっとこっち来い」
ぐいっと手を引っ張られて、今度は別のショップへ導かれていく。
さっきから何度も当たり前のように繋いでくるから、もう振り払う気力もない。
ショーウインドウに映った自分たちの姿が仲のいいカップルにしか見えなくて、ますます複雑な気分になってくる。
「あ、これも似合いそうだね…。てかカラーもでティールも、寧々のためにあつらえた服でしょ」
「お前本当に買わせるのうまいな。それ狙ってやってるだろ」
「これが個人セールスランキング年間トップテン入りを果たした販売員の実力です」
お互いに気心知れているせいか、一向に話の話題は尽きない。
この人の笑った顔が、もっと見たい。
橘マネージャーとこうしていると、時間が流れるのが早く感じてしまう。
ああ、どうしよう。
…彼と一緒にいるのが楽しくて仕方ない。