ウソつきより愛をこめて
美月に言われた通り、私はずっと自分の気持ちから目を逸していた。
…だから罰が当たったんだ。
二年前のあんな別れ方をしなかったら、私は今でも彼の隣にいられたかもしれない。
信じて手酷く裏切られるのが怖くて、この人を信じ続けることが出来なかった。
胸張って私のだってあの女の人に言えてたら、こんなことにはならなかったのに。
帰りの車の中で、私は二度とこの場所から見ることのない彼の横顔を、必死で目に焼きつける。
二度目の恋心の終わりが、静かに近づいてくる予感がした。
寧々を迎えに行く前に、橘マネージャーとたくさんの荷物をマンションの部屋に運び込む。
クリスマスまで、全部見えないところにしまっておこう。
寧々の喜ぶ顔をなんとなく想像していたら、ようやく私の顔にも笑顔が戻っていた。
「結城、そろそろ行くぞ」
「うん」
久しぶりに寧々と過ごせるのが嬉しいのか、橘マネージャーはどこかそわそわしている。
彼の背中を追いかけようとした私は、急に立ち上がったせいでめまいを感じその場でふらついてしまった。
「…わっ…」
「おい、大丈夫か」
「平気平気。寝不足だとよくこうなるから」
咄嗟に掴まれた肩を、橘マネージャーが労わるようにさすってくる。
「あと…いいよ」
橘マネージャーの手から逃れるように、私は距離をとって彼に背中を向ける。
こんな顔見られたら絶対気づかれる。
ただ触られただけなのに、急激に膨れ上がった私の感情は今にも溢れそうになっていた。