ウソつきより愛をこめて
「結城」
「…なに?」
橘マネージャーと話しているだけで、心臓がだんだんと疲弊してくる。
声が震えてしまわないように、私は精一杯平静を装っていた。
「俺がずっとお前と話そうと思ってたのは、この前…俺がここに泊まった夜のことだ」
予想外のことに、心臓が一際大きく高鳴る。
あの時とちょうど同じ場所に立っているせいか、足が少しだけ震えそうになってしまった。
「別に…聞かれるようなことは、何もなかったよ」
…あんなこと、もう思い出さなくていい。
酔った勢いだってことくらい、わかってるから。
「だってお前がいきなり不機嫌になったの、あの後からだよな。…お前なんか知ってて、俺に隠しごとしてるだろ」
「し、してないし!なんなの、急にそんなこと言い出して…」
焦って首を横に振る私の顔を、橘マネージャーがじっと覗き込んでくる。
「ほら、そんなこと言ってないで、早く寧々のお迎え行こう」
「嘘つくなよ。…俺、ここでお前とめちゃくちゃエロいことする夢見たんだ」
「…は…?」
その瞬間ぐいっと腕を掴まれて、私は橘マネージャーの腕の中にあっという間に引き込まれていく。
「…あれってどこまで本当にやったのか、いい加減白状してくれないか?」