ウソつきより愛をこめて
いきなりそんなことを言われて、顔から火が吹き出そうになった。
「だって夢にしてはリアルすぎるだろ。匂いも感触も、間違いなく全部お前だった」
背中に回った手にギュッと力が込もり、もう隙間がないくらい身体が密着していく。
「聞こうと思っても、お前徹底的に俺のこと避けてただろ。今日だって、なかなか聞くタイミングが掴めなくて。…なぁ…まさか俺たち、最後まで…」
「そんなわけないでしょ!未遂だから!」
神妙な面持ちを向けられて、慌てて否定したのが間違いだった。
目と鼻の先にある彼の唇の端が、ゆっくりと上に向かって持ち上がっていく。
「…へぇ、じゃあやっぱり夢じゃなかったんだな」
「……~っ」
もう誤魔化しきれない。
目の前の男が意地悪そうに笑っているのを、私はただ恨めしい思いで見つめていた。
「俺、お前にどんなことした?」
「キ…キスと…、あとちょっと…身体触られたぐらいだから。別に…気にしてない」
もっと可愛い言い方があっただろうけど、なんとなくつまらない意地を張ってしまう。
こんなこと聞いて、橘マネージャーは一体何がしたいんだろう。
「気にしてないなら、なんであんなに怒ったんだ?」
「……」
まるで掌で転がすように、彼は簡単に私を追い詰めてくる。
「…なんで俺を名前で呼んで、受け入れようとした?」