ウソつきより愛をこめて
「待って、なんでいきなりそうなるの。…しかもしてやるって、なんでそんなに偉そうなの?」
「お前が気持ちいいと思ったんならいいだろ。減るもんじゃないし」
顔を徐々に近づけてくる橘マネージャーの胸元を、私は必死に押し返す。
ああなんで、彼の頭の中はいつもこういうことでいっぱいなんだろう…。
そしてなんで私は、彼にキスしたいと思われてることが、こんなに嬉しくてたまらないのだろう。
「……だめ」
ずるい女だ。
口ではそんなことを言いながら、抵抗なんてする気なんてさらさらない。
涙目になった瞳を携えて、じっと彼の動きを待っている。
…美月、私はやっぱり純情なんかじゃないよ。
こうやってこの人を誘う術を、本能で知っているんだから。
「……しょ、っ」
名前を呼ぶ前に、唇が強引に奪われた。
その瞬間身体に電気が走ったような刺激が走り、もっと目が涙で潤んでいく。
触れた部分から溶けて身体がなくなってしまいそうだ。
早々に立って入られなくなりそうな私の身体を、橘マネージャーは壁へと押し付ける。
そのまま角度を変えながら口内に侵入されるたび、私は夢中で彼の要求に応え続けていた。
「…はぁっ…」
肌に影を落とすくらい長いまつげが瞬いて、漆黒の強い瞳が真っ直ぐに私を捉えてくる。
腰に回った彼の手がだんだん下の方に移動してくるのを感じた私は、小さな声を上げて唇を離していた。
「キスだけで終われるか。…俺だって二年も我慢してるんだ」
彼はその言葉に固まった私の太ももをなぞり、容易い動作で自分の膝を壁に押し付けながら私の片足を押し上げていた。