ウソつきより愛をこめて
目の前の綺麗な顔が、まるで激情に押し潰れそうな切ないものに変わる。
「…っ」
感情に任せるように近づいてきた唇を、私は思わず顔を横に向けて拒んでしまった。
「なんだよ…それ」
耳元にある彼の口から聞こえた唸るような低い声が、私の鼓膜を揺さぶってくる。
これは嫉妬…?そんなまさか。
私がいないと寧々が手に入らないから、必死になってるだけ。
浮かんだ淡い期待は、すぐに自分が出した答えによって打ち消されてしまった。
「この間は、受け入れたくせに…」
かわりとばかりに、彼は首筋に熱い舌を押し付けてくる。
「…ひんっ…」
小さく悲鳴をあげてしまった自分の口を、私は自分の手で必死に押さえ込んでいた。
直後に吸われるような痛みが走って、その場で身を激しく捩る。
「つけな…いで…っ」
「もう遅い」
懇願するように声をしゃくり上げた私に向かって、彼が無慈悲にそう告げていた。
「たち、ばな…」
「悔しかったら、いつまでもふらふらしてる自分を恨め」
橘マネージャーのそのセリフが、耳に焼きついて離れない。
何度も襲いかかる熱を、私は声を噛み殺しながら受け入れるしかなかった。