ウソつきより愛をこめて
「手料理とか作ったことないですけど。…ってか家に行ったことすらない」
「…えっ、それ付き合ってたっていうの?」
「どうだかね。少なくとも私は付き合ってるつもりだったけど」
する事だけはひたすらした。
会うのは決まってラブホだったけど。
「例のマネージャー?元カレって」
「すいませんね。恋愛経験少なくて。それくらいしか披露する話がありませんよ、私は」
「もう。エリカはこの話になるとすぐ卑屈になるよね。噂によるとものすごいイケメンなんでしょ?顔くらい見てみたーい」
「見れるかもね。そのうち」
「えっ、なんで?」
「今日メール来てた。十二月からマネージャーがヘルプで来るって。まぁあの人が来るとは限らないけど、念のためすぐ断り入れておいた」
「そこまで避けるんだ。…しかしエリカもバカだね~。ヘルプ入れてくれるだけでも有難いのに、自分で自分の首絞めて。まあ見てるこっちとしては面白いけど」
食洗機のスイッチを押した美月が、コートを羽織って玄関に向かう。
言われたことが図星過ぎて言い返せない…。
公私混同してる私が、一番社会人として失格なのだ。
「あ、そういえばエリカ。ちょっと気をつけた方がいいかも」