ウソつきより愛をこめて
それからしばらくして聞こえてきた衣擦れの音に、私は幸せな微睡みの中から抜け出し、薄目を開けゆっくりと起き上がる。
「…寝た?」
囁くようなその声にこくんと頷いた私は、彼が嬉しそうに寧々の枕元にプレゼントを置いているのを黙って見つめていた。
「明日どんな反応するだろうな。あー、すげー見たい!このまま泊まってダメ?」
「…バカじゃないの」
リビングに戻ってきた途端そんなことを言い出す橘マネージャーに、つい本音が漏れる。
彼女いるくせに…本当に信じられない。
今まで彼が私に行ってきた行為も、間違いなく浮気だ。
何も知らなかった私のほうが、重い罪悪感を彼女に抱いている。
2年前から彼女の存在に怯え続けて来た私は、…なんて滑稽な女なんだろう。
「…なんか、さっきから俺に対してやけに辛辣だな。店出る前は、普通だっただろ」
「なんでか、思い当たることないの?」
「お前の考えてることは、さっぱりだな」
「……最低ね」
「エリカ」
急に名前で呼ばれて、私は目を大きく見開き動きを止める。
ぴんと張り詰めた空気に、背筋から不安が一気に駆け上がっていく。
「…エリカ」
こんな茶番は止めさせたいのに、喉元まで苦しい何かがこみ上げてきて、言葉を発する事ができない。
「何があっても、俺の気持ちは変わらない。…だからお前に、これを受け取ってほしい」
差し出された漆黒のジュエリーケースには、金色でブランド名が刻印されてある。
胸元の服を握り締めていた私の手は、怒りと悲しみで小刻みに震えていた。