ウソつきより愛をこめて
「本当は二年前に、エリカに渡そうと思ってたやつなんだ」
愛おしそうに目を細めながら、橘マネージャーがケースを開ける。
中から現れたのは、大きなダイヤを花びらが抱くようなデザインのエンゲージリング。
そのプラチナの輝きさえも、私には嘘にまみれているように思えた。
「俺、あの時…」
「…めて」
「エリカ…?」
「やめて…っそんなの、いらない…!あなたとなんて、絶対に結婚しない…!」
涙を浮かべながら全力で拒否した私を見て、彼の動きが止まる。
「…バカに、しないで」
声が震えそうになるのを必死で抑えながら、私は爪が喰い込むほど、自分の身体を強く抱きしめていた。
彼女の細くて長い指に、よく似合っていたその指輪。
デザインも何もかも全く同じものが、今彼の手の中に納められている。
この人は一体どこまで、私を傷つければ気が済むの?
たとえ嘘でも、私のために選ぶことすら煩わしかった?
…もう、最初から全部偽りだったのかもしれない。
二年前私を包み込んでくれた手のひらの温もりさえも、あなたは信じさせてくれないんだから。
「ブランド物の指輪やっとけば、…女なら、誰でも言うこと聞くみたいな考え改めた方がいいよ」
「エリカ、お前何言って…」
「残念だったね。…もう私の機嫌なんて取る必要ないよ。この際だから、はっきり言っておくけど」
私の顔には、涙の代わりに自嘲の笑みが浮かんでいた。
「…寧々はあなたの子供じゃないから」