ウソつきより愛をこめて
そこにいた全員の目が、寧々のところに集中する。
あれだけ音を立てれば起きてしまうのも無理はない。
寝ぼけ眼の寧々は、ゆっくりと私たちの方に近づいてきていた。
「パパだ」
首をかしげるようにした後、寧々が恥ずかしそうに笑っている。
「お、おいで…寧々」
ひろくんの声は情けないくらい震えていて。
…その目にはうっすらと涙が滲んでいた。
「パパ、あのね、サンタさんねー」
「う、うわ、こんなにもう喋るのか…」
「そうだよ。寧々、色んな言葉覚えたもんね」
懐いてないなんて、ひろくんはなんでそんなに自信がなかったんだろう。
寧々の生き生きとした表情を見ていればわかる。
…パパが嫌いな子供なんて、いるわけがないのに。
カタン、と後ろで音が聞こえて私は橘マネージャーの方を振り返る。
部屋から出ていく彼の目尻が赤みを帯びているような気がしたけど、もう声を掛けることも出来なかった。
「ママ、…しょうちゃんは?」
寧々が不安そうに見上げて私に聞いてくる。
「…本当に、大事な人のところに行ったんだよ」
そう答えた私は、忘れ去られたように置かれたジュエリーケースを見て、ようやく一筋の涙を零していた。