ウソつきより愛をこめて
「マジか!今はいって言った!言ったよね?いや~めげずに誘い続けて良かったよ」
「いや、えと、あの…」
「さっそく今晩どう?俺、雰囲気のいいバー知ってんだよ」
調子づいた前橋さんが、ぐいぐいと押しを強めてくる。
まずった、かなりうざい、どうしよう…。
助けを求めるために美月の方に視線を向けたけど、あいにく接客に捕まってしまっていた。
「終わったら連絡入れるからさー、番号教えて」
「……」
ここで断ったら、またしつこく粘られるに違いない。
面倒くさいけど、この状況から逃れられるなら…。
後で適当に理由つけて断ろうと思い、コートのポケットに入ったスマホを取り出す。
げんなりして俯き加減だった私の視界が、次の瞬間真っ黒な影に覆われていた。