ウソつきより愛をこめて

「は…、え…?お前の?」

橘マネージャーがありえないくらい動揺しているのが見て取れる。

瞬きすら忘れたその瞳には、どこか焦りの色が混じっていた。

「……」

その時初めて彼に勝てたような気分になって、気持ちが高揚した。

無意識に私は唇の端を持ち上げて笑みを作る。

橘マネージャーのこんな表情を見るのは初めてだった。


「…そう。この子、私の子供なの。可愛いでしょ?」

びっくりして私の後ろに隠れてしまった寧々を、私は見せつけるように腕に抱き上げる。

本当のことをこの人に話すつもりなんて毛頭なかった。

あなたなんかいなくたって私はこんなに幸せなんだって見せつけて、ちょっとだけ優越感に浸れればそれで良かったのに。


「……」

一瞬黙り込んでしまった橘マネージャーが、金縛りにあったように身体を硬直させている。

「…結婚…してないよな?」

控えめな声だけど、苦しそうに細められた目はどこかまだ私を疑っているようにも感じた。

「してないけど…それが何?」

「その子の、父親は」

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