ウソつきより愛をこめて
うわ…さすがに今のはあからさますぎた。
意地でちゃんと否定できなくて、まるで橘マネージャーの子だと、暗に示しているような態度をとってしまった。
「…エリ、」
「じゃ、じゃあお疲れ様でした」
これ以上何かつっこんで聞かれる前に、その場で踵を返して彼に背を向ける。
「抱っこしたままでいい?」
小さく頷いた寧々をしっかりと抱えて、私は逃げるようにその場から走り去っていた。
「おい…待てよ!」
後ろから橘マネージャーの焦ったような声が聞こえてくるけど、わざわざ振り返るわけがない。
当たり前のように追いかけて来るその気配に、私の精神状態はギリギリのところまで追い詰められていた。
…ど、どうしよう!
浅はかすぎる自分の行動を呪わずにはいられない。
別れた彼女が勝手に自分の子供を産んだなんて、橘マネージャーにとったら大迷惑な話だろう。
この人は、怒らせたら恐ろしいくらい人が変わる。
嘘だってバレたら、本気で殺されかねない。
「…きゃ、っ…ひゃははっ…!」
私が走る度大きく揺れる振動が面白いのか、寧々はひとりで大爆笑している。
全く呑気だな…なんて思った瞬間、私の身体は何かに躓き、大きく前方に傾いていた。
やばっ、転ぶ…っ!!