ウソつきより愛をこめて
「…橘マネージャー」
「二年前、何があった」
「それ、は…」
「俺とあんな別れ方したくせに、何で…」
言葉を詰まらせた橘マネージャーが、私の頬に大きな手で触れてくる。
振ったのは私。
でも…悪いのはあなただ。
会いたいと言えば、仕事が忙しいと言われた。
大事な話があると言えば、また今度と言って、いくら待っても連絡をくれなかった。
それなのにあなたは、突然呼び出したかと思うと私を朝まで抱いて離さなかった。
欲を満たすためだけの存在かもしれないと不安になりながらも、私はバカみたいに信じ続けたのに。
他の女の人と仲良さそうに“あの話”をしているのを聞いた時は、もうさすがに限界で。
―――面と向かってさよならが言えるほど、私も強くなかった。
転勤の話が伝わらないように徹底的に根回しをして、仙台に向かう新幹線に乗る直前で“さようなら”の五文字を送った。
クリスマスのイルミネーションで彩られた街がどんどんぼやけていくのを、私は席に座ってじっと見つめていた気がする。
…その日はちょうど、二人の一日目の記念日だった。