ウソつきより愛をこめて
「…くっしゅん!」
寧々がくしゃみをした瞬間、私ははっとして腕の中に視線を移す。
「か、風邪ひいたら大変…」
「ごめん。寒いか、寒いよな」
おろおろする私をよそに、橘マネージャーは巻いていたマフラーを外し、ぐるぐると寧々の首や頭に巻きつけていた。
「…あの、そんなことしたら、寧々が息苦しいと思うんだけど…」
「いいんだ。耳や口周りは意外と冷える」
そのあまりの過保護ぶりに、私は呆れて破顔する。
この人ってこんなに子供好きだっけ?
どちらかというと、ガキはうるさいから嫌いだとか平気で言いそうなタイプなのに…。
自分の汚れたコートを手で払った橘マネージャーが、私の両腕を支えその場に立ち上がらせてくれる。
ふと顔を上げると、目の前の彼と視線がぶつかった。
「…してくれ」
「え…?」
「俺と結婚してくれ」