ウソつきより愛をこめて

客注品を取りに来たお客様に商品を渡したら、商品のサイズが違っていた。

メーカーにはもう在庫のない商品だったから、わざわざ在庫の残っていた他の店舗から取り寄せたものだったのに。

急ぎの商品だったため、私は確かに確認をしないままお客様に入荷の連絡を入れてしまった。

深く何度も謝罪したけどお客様の怒りが収まることは当然なく、責任者の橘マネージャーが対応し新作の商品を同じ値段で販売することで、ようやく納得していただけたのだ。

「お前はそうやっていつも人のせいにするよな。他の奴は、お前がミスしても文句ひとつ言わずにカバーしてるのに」

「…それは!」

「仕事はひとりでやるものじゃない。それをよく覚えとけ」



その時何も言い返せなかったのが悔しくて、どんなに怒られても私はへこたれず笑顔で働いた。

橘マネージャーを見返すくらいすごい販売員なってやるって心の中で密かに燃えていたから。

相変わらず細かいミスはするけど、私の提案を信頼してお店に通ってくれる常連さんも少しずつ増えていった。

だけど肝心の橘マネージャーには、一度も褒めてもらえたことがない。

ただ私を見つめる厳しい瞳は、少しずつ優しいものにかわってるような気がした。

< 47 / 192 >

この作品をシェア

pagetop