ウソつきより愛をこめて
OJTが終わって店舗に配属されてからの半年で、私は順調に自分の販売成績を伸ばしていった。
橘マネージャーに会う日は少なくなったけど、たまに店舗の巡回にやってくるから完全に顔を合わせなくなったわけじゃない。
「えぇっ、橘マネージャーってまだ二十五歳なの?絶対三十代だと思ってた!」
「悪かったな。老けて見えて。結城…お前敬語使う気すらないだろ?」
いつの間にか、くだらない冗談を言い合えるくらいに親しくなっていた私たち。
始めは嫌な奴って思ってたけど、その時はもうそんな事は思わなくなっていた。
店では売上に貢献しているせいか、たまにミスしても誰も私を怒ろうとしない。
今まで私を本気で怒ってくれたのは、橘マネージャーだけだった気がする。
その日は悲しいことがあって、仕事中笑っているのがずっと辛かった。
だから休憩室でたまたま本社から来ていた橘マネージャーと出くわした時は、なんとなく気まずくて。
「…お疲れ、様です」
言葉も少なめに、お辞儀だけして横を通り過ぎようとしていた。
「おい結城。今夜予定あるか?」
「…い、いえ」
「じゃあ店終わったら、飲み付き合え」