ウソつきより愛をこめて
「…ヘラヘラって…もっと他の言い方ないの」
「それがお前唯一の取り柄だろ」
「なんかバカにされてる気がする!」
「違う。俺は褒めてやってんの」
「え…!?」
橘マネージャーからの意外な言葉に、私は心底驚いた。
…褒められたのは、一年近く一緒に仕事をしてきて初めてだ。
「…嬉しい…」
長い苦労が実った気がして、目尻に涙が滲んでくる。
「実は最近、失恋して…」
「………へぇ。お前って付き合ってるやついたんだ」
ノリで白状した私の隣から、幾分トーンの低い声が聞こえて来た。
「違う違う。…幼馴染のお兄ちゃんに小さい頃からずっと片思いしてたんだけど、その、…今度結婚することになったらしくて…」
「…ふーん」
あの事を思い出すだけで、テンションが下降していく。
私のどうでもいい恋愛話を、彼はゆっくりタバコを吸いながら静かに聞いていた。
「でも今日は橘マネージャーに褒められたし、別にいいや!忘れる!」
バーテンさんから出されたフルーティで飲みやすいカクテルを、私は勢いで飲み干す。
「これ美味しい。なんていうの?」
「…レディーキラー」
「へ?」
「心配すんな。酔っ払って動けなくなったら、俺がお前を持ち帰ってやるから」